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土地・建物(マンション・アパート・店舗・事務所等)を賃借する借主の居住トラブルの解決をお手伝いする組合です。
判例紹介
3年ごとに賃料を15%増額するという賃料自動改定特約のある期間20年の賃貸借契約で、①右特約が事情変更の原則により失効したとの主張が否定され、また、②右特約が有効であることをを理由とした賃借人の賃料減額請求ができないとした事例 (東京地裁平成10年8月27日判決、判例時報165号138頁)
(事案の概要)
X(賃主)はY(借主)に対して、昭和60年4月、10階建て事務所兼店舗の5階ないし10階部分(以下本件建物という)を賃貸したが、右賃貸借契約には、賃料を3年ごとに15%増額する旨の賃料自動改定特約がついていた。
昭和63年4月、平成3年4月には右特約に基づく賃料増額が行われたが、右特約に基づく平成6年4月、平成9年4月の増額については、Yはいわゆるバブル経済の崩壊により右特約が前提とする経済情勢は平成4年以降大きく変動し、右特約は遅くとも平成6年4月まには事情変更の原則により失効した旨主張して右各増額に応じなかった。
そして平成8年3月には賃料が経済事情の変動等により不相当になったとして、Xに対して賃料減額の意思表示を行った。XはYに対して、右特約に基づく平成6年4月、平成9年4月の賃料増額の確認を求める訴えを提起し、YはXに対して、平成8年3月以降の賃料減額の確認を求める反訴を提起した。
(判決)
本判決は、「本件賃料自動改定特約の有効性を考えるに当たっては、同特約の適用がないとした場合の本件建物部分の相当賃料を検討することが必要である。なぜならば、被告(Y)が主張するように、いわゆるバブル経済の崩壊により右相当賃料が相当程度に減額されるべきなどの事実関係があるとすれば、本件賃料自動改定特約を適用する基礎となる事情に変動があり、その結果、事情変更の原則の適用によるものか否かはひとまずおくとして、同特約は失効したと判断する余地が生じてくるからである」旨判示した上で、
右特約が適用されるとした場合の賃料が平成6年4月時点で月334万5925円、平成9年4月時点で月384万7814円、他方右特約が適用されない場合の相当賃料は前者が372万8100円、後者が月365万5500円であり、前者では右特約を適用した場合の賃料がそうでない場合を下回り、後者では若干上回るに過ぎない旨認定し、「本件賃料自動改定特約は少なくとも現段階においては、未だ同特約の前提となる事情について、同特約が失効したものと判断するに至るほどの変動があったとまでは認め難い」と右特約の有効性を認めるとともに、右特約が失効していない以上賃料減額請求の行使はできないとして、X(貸主)の請求を容認し、Y(借主)の反訴請求を棄却した。
(寸評)
事情変更の原則による失効を含め賃料自動改定特約の有効性をめぐる紛争は多く、本件は右特約の有効性を認め賃料減額請求を否定したものであるが、その論理構成については参考になる判決である。
東京・台東借地借家人組合
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