【判例紹介】 地代の減額請求が借地上の建物の家賃をもとに算定すべきとされた事例
判例紹介
借地人の地代減額請求が、借地上の建物の家賃を元に適正継続地代を算定すべきものとして棄却された事例 (東京高裁平成14年10月22日判決、判例時報1800号3頁)
(事案の概要)
Xは、横浜市中心部に店舗・共同住宅・事務所ビルを所有する借地人であり、Yは、その敷地の所有者である。XはYに対し、平成6年に定められた月額金176万7000円の地代額につき、公租公課の減額及び土地価格の下落を理由として、平成12年5月以降月額金113万1000円に減額請求した。
(裁判)
1審の横浜地方裁判所は、不動産鑑定結果に基づき、月額金135万6000円へ減額するとの判決を言い渡した。これに対し、Yは東京高裁に控訴を申し立てた。
東京高裁は、「土地の市場価格や公租公課の額が減少したというだけでは、直ちに減額されるべきでなく、地上建物の賃料をもとに土地残余法などによって算出される地代の額が従前の地代の額を下回る場合に、上記の算出される額を参考として減額することを検討すべきである。」とした。
そして、本件では、「賃借人がその所有の地上建物の賃料収入などを把握しながら、賃貸人の要請あるいは裁判所の勧告を無視して、これを明らかにせず、それらの資料が提供されれば、土地残余法による地代を算定すれば、現行の地代が適正水準であるかどうかが明確になるはずである。もし、その額が現行賃料を大きく上回ることがあるならば、一挙にその額に増額することは相当でないこともあるから、継続性を考慮して相当額の範囲にとどめたり、あるいは、これまでに地代以外に授受された金額を考慮して、調整することもあろうが、まず上記の適正額の算定をするのが先決ではないかと勧めた。ところが、Xは、このような開示を拒み、適正な地代額の計算の道を閉ざしたのである。Xは、自己の収受する建物賃料を開示しないのであって、これが下落したとの事実を認めることもできない。したがって、当裁判所としては、上記減額意思表示の時点でも、適正な地代の額は、現在の地代の額を下回っておらず、かえって上回っている可能性も残されていて、これを否定することはできないものと認定判断する。よって、Xの減額請求はすべて棄却すべきものである。」と判示した。
(短評)
東京高裁は、地代減額請求について、地上建物の賃料収受額をもとに、土地残余法(土地の収益還元価格を算定する上で必要な土地の適正な地代の額を算出する方法・国土庁平成6年9月26日「新手法による土地残余法」)及び東京高裁の3判例(平成12年7月18日判決、同年9月21日判決、平成13年1月30日判決)によって地代を算定すれば、適正地代額が明確になるとしている。他方、公租公課の減額、地価の下落は賃料減額の根拠にならないとしており、実務上参考になる。
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